「夏=痩せる」の誤解。夏の体重減少リスクと正しい体調管理

運動生理学

「夏は汗を沢山かくから痩せやすい」そう思っている人も多いのではないだろうか。

確かに、夏場は体重が減っていることがある。しかし、その減少が「健康的な減量(体脂肪の減少)」であるかどうかは慎重に見極める必要がある。

今回は、知っておくべき「夏の代謝の仕組み」と、夏場に体重が落ちる理由を解説したい。

そもそも夏は痩せやすいのか?

結論から言えば、1年の中で最も痩せにくい(基礎代謝が落ちる)季節が夏である。

身体がエネルギーを生み出す際、同時に熱が発生する。冬場は外気温が低いため、体温を保つために身体は自ら熱を作り出そうとする。寒くて震えるのも筋肉を震わせて発熱を促す身体の反応である。そのため、冬は基礎代謝が上がり、カロリーを消費しやすい。

一方、夏場は外気が暑く、身体は発熱する必要がない。むしろ体温の上昇を防ぐため、身体は代謝を抑えようとする

つまり、「汗をかいているから消費カロリーが多い」わけではなく、代謝の仕組みから考えれば、夏こそ最も脂肪が燃焼しにくい時期になる。

では、なぜ夏に体重が落ちるのか

代謝が落ちているにもかかわらず夏に体重が減る理由は、主に以下の2つになる。どちらも体脂肪が減ったわけではない点に注意が必要。

1.発汗による水分の減少

成人の身体は約60%が水分で占められている。夏場はトレーニング中の発汗量が増加するだけでなく、日常生活においても知らず知らずのうちに汗で水分が奪われていく。

その結果、普段から慢性的な脱水状態になっている可能性が高い。

体内の水分が数百ml減れば、体重は数百g減少する。しかし、これは「体内の水分が抜けただけ」であり、適切な水分補給を行えば体重はもとに戻る。常に身体が脱水気味である状態は、血液の粘度を高め、内臓や心臓に負担をかけることになる。

そのため、普段から練習の前後に体重を測定する習慣をつけると良い。

「練習後の体重減少が、運動前の体重の2%以内に抑えること」

が脱水防止の目安となる。発汗に応じた適切な水分・塩分補給を徹底したい。

2.暑さによる食欲の低下

身体の発汗作用は交感神経が優位になることで促進される。交感神経は運動時や緊張時に働く神経であり、この状態が続くと胃腸などの内臓運動や消化液の分泌が抑制されてしまう。

さらに、のどの渇きから冷たい飲み物を大量に摂取すると、胃酸が薄まって消化能力が低下する。その結果、食欲が低下して食事量が減り、摂取カロリーが足りなくなって体重が落ちる。

夏場の体重減少が引き起こすリスク

このように、夏場に起こる減量の多くは、正しいエネルギー収支(消費>摂取)によるものではなく、暑さによる副次的な「水分不足」と「栄養補給不足」によるものが多い。

これは、体脂肪ではなく筋肉や水分が削られている状態である、身体にとっては大きなダメージとなる。ハードなトレーニングをしているランナーの場合、それによる悪影響もでてくる。

  • トレーニングからの回復の遅れ
    タンパク質・炭水化物不足による筋肉の修復の遅れや、エネルギー不足状態が続くことによる筋肉の分解
  • 貧血のリスク
    発汗に伴い鉄分やミネラルが流出してしまい、貧血を引き起こす原因となる
  • 慢性疲労
    夏場の疲労がとれず蓄積し、涼しくなる時期に走れなくなる。

エネルギーと必要な栄養素をしっかり補給し、その上でトレーニング量を増やした結果としての減量であれば問題はない。しかし、水分不足や食欲低下による減量には注意する必要がある。

まとめ:体調管理こそ夏の最優先トレーニング

近年、日本の夏は猛暑化が進み、身体にかかるストレスは非常に高くなっている。

「夏に体重が減ったから走れている」と錯覚せず、「脱水していないか」「しっかり食べられているか」を常にセルフチェックすることが重要だ。

水分不足と栄養不足を防ぎ、上手く夏を乗り越えること。これこそが、秋に最高のコンディションで充実したトレーニングを積むための最大の鍵となる。

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