ダニエルズのVDOT表を使う際の注意点

トレーニング理論

『ランニング・フォーミュラ』の著者、ジャック・ダニエルズが提唱した「VDOT表」は、多くのランナーにとってトレーニング強度の指標となっている。

しかし、この表を機械的に活用することは、かえって練習の質を下げ、故障や挫折を招く要因となる。

今回は、VDOT表を用いる際に注意すべき点を紹介したい。

VDOT使用の注意点

目標とするペースで設定してはいけない

現在5,000mの自己記録が18分で次の目標を17分30秒とした場合、この17分30秒のVDOTを使ってトレーニングしようとするランナーがいる。このペースで走ることができれば、17分30秒で走れると考えているからだろう。

しかし、これは誤りで、多くはオーバーペースとなり練習がこなせない。VDOTは現在の能力に応じた適切なペースである。

よって、目標とするタイムのVDOTを用いることは能力以上の負荷になってしまうため、適切な効果が得られないことが多い。

VDOTを用いる際は必ず、現在の自分のベストタイムを参考にするのが良い。

自己ベストのVDOTを常に適用してはいけない

トラックレースで自己ベストがでた場合、その時のVDOTは表のとおりだろう。しかし、トラックレースは疲労を調整し、入念なアップを行い集中してレースに臨む。また、レース中は集団で走ることが多く、ラストスパートもするだろう。そのような条件で出されたタイムを、普段のトレーニングで再現することはまず無理である。

自己ベストのVDOTを日常的に用いることは、常にオーバーペースを強いているのと同じである。

気候を考慮する必要がある

春のトラックレースで自己ベストが出たとする。そのVDOTを用いて夏場に練習すると、おそらく気温の影響でこなせなくなってしまうだろう。この場合気温による補正を入れる必要がある。

異なる距離からの算出は正確性が低い

1500mや5000mの記録からVDOTを算出してフルマラソンのトレーニング、フルマラソンの記録からVDOTを算出して1500mや5000mのトレーニングを行う場合、レースの距離が離れているため正確なVDOTを推定することが難しい。

春から夏にかけて、トラックに出場した場合はそのタイムのVDOTを参考にすべきだし、トラックレースに出場せずに5000mなどのトレーニングを行う場合は、冬場のフルマラソンやハーフマラソンの結果だけではなく、現時点で走ることができるタイムをもとにVDOTを考える方が良い。

VDOTをどう使うべきか

VDOTを用いたトレーニングがこなせない場合、設定が間違っている可能性が高い。自己ベストからVDOTを算出し、そのタイムをそのままトレーニングに使うことは大変危険なことである。

重要なのは「今、走ることができるタイムから算出する」ことである。

5000mの自己ベストが18分でも、今の状況で走れるのは18分20秒だと感じるならば、18分20秒のVDOTを参考にすべきである。そうすれば、現時点の体に対して適切な負荷になるはずだ。

ただ、自分の現在の走力を正確に見積もることは難しい。そのため、VDOT表を使う場合は、1~2段階下げた設定にするのが良い。また、心拍数管理や、レースペースに対するパーセンテージなどを用いるとより適切な負荷になる。

結論

VDOT表は、あくまでトレーニングを補助する指標である。表の数字を意識しすぎて、現状を無視した負荷をかけることは大変危険である。

日々のトレーニングで優先すべきは「今の自分に対して適切な負荷をかけること」である。数値にこだわらず、柔軟にトレーニングを積み重ねて欲しい。

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