フルマラソンの30km以降で脚が止まる。
フォームが崩れ、ピッチが落ち、粘れない。
スピード練習もしている。
距離も踏んでいる。
それでも後半で失速してしまう——。
そんなランナーにこそ、取り入れてほしい練習があります。
それがトレイルランニングです。
普段はトラックやアスファルト中心のロードランナーこそ、山へ入る価値があります。
なぜトレイルがマラソンに効くのか?
不整地が「本物の脚」をつくる
トレイルは路面が常に不安定です。
・木の根
・石
・傾斜
・ぬかるみ
こうした環境では、無意識に足関節や股関節周囲の細かな筋群が動員されるため、身体の安定性を向上させることができます。
その結果として、
フォームが崩れにくい
接地が安定する
ブレない体幹が作られる
マラソン終盤でも“動き続けられる脚”が養われます。
登りが心肺と筋持久力を同時に鍛える
トレイルには急勾配が存在します。
平地では出せない高い負荷が、自然にかかります。
スピードを上げなくても心拍は上がる。
しかも脚筋力も使う。
これは効率的な有酸素能力 × 筋持久力トレーニングです。
トラックでインターバルをしなくても、同等の刺激を得られることがあります。
トラックに行く時間がない人や、インターバル練習が苦手な人にもオススメです。
下り坂が“終盤耐性”を作る
見落とされがちなのが下りです。
下りでは大腿四頭筋にエキセントリック収縮(伸張性収縮)が強くかかります。
これはマラソン後半で脚が止まる原因と深く関係しています。
適度に下りを経験することで、
筋損傷への耐性
着地衝撃への順応
フォーム保持能力
が向上します。
マラソン終盤の脚づくりという観点では、30km走も代表的な練習です。
30km走の効果については、こちらの記事で詳しく解説しています。
階段が神経系を刺激する
トレイルには不規則な階段が含まれることがあります。
段差や幅が一定でない階段を走ることで、
リズム変化への対応力
ピッチ調整能力
股関節の引き上げ動作
が自然と鍛えられます。
結果として、脚の回転率が向上し、スムーズなフォームにつながります。
衝撃が少なく、ダメージを抑えられる
土や芝の路面はアスファルトより衝撃が小さいため、関節へのダメージは比較的抑えられます。
ただし——
捻挫のリスクはありますので、注意しましょう。

足元は柔らかくてダメージが少ない
どんなランナーにおすすめか?
トレイルランニングはいろいろなレベルの人に取り組んで欲しい練習の一つです。
特に効果的なのは:
30km以降に失速する人
フォームが崩れやすい人
筋持久力に不安がある人
スピードだけでは補えない“土台”を作れます。
実際の取り入れ方(具体例)
トレイルは、LSDの発展形ともいえるトレーニングです。
LSDの基本的な考え方については、こちらの記事で解説しています。
トレイルの場合は、不整地という負荷が加わるため、より実践的な脚づくりが可能になります。
■ 時期
レースから遠い時期(ベース期)
■ 頻度
月2回〜週1回
■ 時間
90〜120分程度(LSD感覚)
■ ポイント
登りはしっかり使う
下りは無理をしない
心拍はゾーン2〜3中心
スピードを出す必要はありません。
「ゆっくりきつい」が理想です。
トレイルランニングの注意点
トレイルランニングは非常に効果的なトレーニングですが、環境はロードとは大きく異なります。
トレイルランニングをする上での注意点を挙げていきます。
● 水分は必ず持参
山には自販機やコンビニはありません。
気温が低くても、登りでは発汗量が増えます。
脱水はパフォーマンス低下だけでなく、判断力の低下にもつながります。
ソフトフラスクやハイドレーションを携行
90分以上なら簡易補給も準備
「少し多め」が基本です。
● 捻挫に注意
不整地では足関節の安定性が求められます。
特に初心者は
下りでスピードを出しすぎない
視線を足元ではなく2〜3歩先へ
疲労時ほど慎重に
無理をせず、慣れるまではペースを抑えて走りましょう。
● 服装選択
山の中は枝や葉が生い茂っており、気づかないうちに擦り傷を負うことがあります。また、転倒時には皮膚を大きく傷つけるリスクもあります。
夏場は暑さを感じますが、アームカバーやレッグサポーターなどで肌を保護することをおすすめします。
これらは
擦り傷防止
紫外線対策
虫刺され予防
転倒時のダメージ軽減
といった役割があります。
素材は速乾性・通気性の高いものを選び、必要に応じてコンプレッション機能を活用すると疲労軽減にもつながります。
● シューズ選択
可能であればトレイル専用シューズを使用しましょう。
ロードシューズと比べて
アウトソールのグリップ力
横方向の安定性
耐久性
が高く、安全性が向上します。
● 登山者への配慮
トレイルはランナーだけの場所ではありません。
すれ違い時は歩く
挨拶をする
狭い道では譲る
マナーを守ることが、継続的に走れる環境を守ることにつながります。
レース期との使い分け
レースが近づくと、
レースペース走
インターバル
トラック練習
が増えます。
一方で、レースから遠い時期こそ「土台づくり」。
トレイルはそのための最高の環境です。
まとめ
トレイルランニングは単なる気分転換ではありません。
筋持久力
バランス能力
神経系の刺激
終盤の耐性
これらを一度に鍛えられる、極めて効率的な補強トレーニングです。
ロードランナーこそ、山へ。
身体の“基礎OS”をアップデートする感覚を、ぜひ体験してみてください。

まずは低い山から挑戦を


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