【マラソンで結果を出す】安静時心拍数(RHR)を「毎日活かす」具体的な方法

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COROSやガーミンの普及により、安静時心拍数(RHR)を誰でも手軽に測定できるようになりました。しかし、「数値は毎日見ているけれど、どう活用すれば良いのか分からない」という方も多いのではないでしょうか?

結論から言うと、安静時心拍数の変動は、疲労の蓄積トレーニングの適応、さらにはマラソンの記録にまで大きく関係します。

  • RHRが低い日は「回復良好で攻めるべきサイン」

  • RHRが高い日は「疲労蓄積で休むべきサイン」

本記事では、このRHRを日々の練習やレース調整における重要な指標として活用し、マラソンで結果を出すための具体的な方法を解説します。

1. 安静時心拍数(RHR)とは?ランナーが知っておくべき基本

まず、RHRの定義を確認しましょう。

RHRの定義と変動のメカニズム

安静時心拍数とは、起床直後でストレスのない状態に測定する心拍数です。

この数値の絶対値(高い・低い)自体よりも、普段の自分の値に対して、その日の値がどう変化しているかを知ることが最も重要です。

  • トレーニングへの適応: 継続的なトレーニングにより、身体が適応するとRHRは徐々に低下します。

  • 疲労やストレス: 回復不足やストレスが蓄積すると、RHRは上昇します。

日常的に確認を続けることで、「今日は調子が良いのか」「疲労が残っているのか」といった、目に見えない体調が客観的に分かるようになります。

2. なぜ安静時心拍数で「体調」と「マラソン適性」がわかるのか?

RHRがランナーにとって重要視されるのには、生理学的な明確な理由があります。

1. 心拍出量の増加と有酸素能力(マラソン適性)

持久トレーニングを重ねると、心臓の1回拍出量(Stroke Volume)が増加します。これは、心臓が一回の拍動で送り出す血液量のことです。

これにより、体に必要な同じ血流量を、より少ない拍動(低い心拍数)で供給できるようになります。

つまり、RHRが低いということは、それだけ心臓のポンプ機能が効率的であり、有酸素能力が向上しているサインの一つと言えます。

2. 自律神経バランスの指標(回復度)

RHRの変動は、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスを反映します。

  • RHRが低いとき: 副交感神経が優位な状態であり、リラックスし、回復が良好であることを示します。

  • RHRが高いとき: 交感神経が優位となり、体が緊張状態にあり、疲労やストレスが蓄積している可能性が高くなります。

マラソン練習では、「どれだけ走ったか」だけでなく、「どれだけ回復できているか」も結果を大きく左右します。RHRは、その回復度合いを測る貴重な指標なのです。

3. 【実践】RHRから見抜く「オーバートレーニングのサイン」と「回復状況」

RHRを日々のコンディションチェックに活用する方法です。

1. トレーニング適応の進行度

トレーニングを継続していくと、数週間から数か月単位でRHRは徐々に低下します。これは順調に有酸素能力が向上しているサインです。トレーニングのスケジュールが正しいことが分かります。一方で、安静時心拍数が停滞したり、数日〜1週間以上にわたって上昇している場合は、
トレーニング刺激の不足、あるいは回復不足の可能性が考えられます。

2. オーバートレーニング・体調不良の兆候

毎日RHRを測定していると、普段より5〜10bpm高い状態が数日続くことがあります。これは身体からの黄色信号です。

このような場合、以下のような要因が考えられます。

  • 睡眠不足

  • 免疫低下(風邪の初期など)

  • 高強度練習の入れすぎ(疲労の蓄積)

安静時心拍数は、「今日は休むべきかどうか」を判断する大切な材料になります。

マラソン練習への具体的な活用方法

1. 日々の練習判断

安静時心拍数を測定することで、見えない体調を把握できるようになります。
安静時心拍数が高い朝は、ジョグに切り替えたり、完全休養にすることで疲労回復を優先しましょう。

平常値であれば、予定通りポイント練習を実施するなど、日々の練習判断の指標として活用できます。

2. テーパリング期のチェック指標

レース本番に向けてコンディションをピークに持っていく「テーパリング(調整期)」において、RHRは非常に重要な指標となります。

  • レース1〜2週間前にRHRが徐々に低下してくる → 疲労が抜け、調整がうまくいっているサイン

  • テーパリングに入ってもRHRが下がらない、または上昇傾向 → ボリューム削減不足、または体調トラブル(風邪など)の可能性。疲労が抜けきっていない

3. レース当日のコンディション判断

テーパリング期間を通してRHRの推移を確認することで、レース当日の戦略的なプランも考えることができます。

  • RHRが普段と同等、または普段より低い場合 → 疲労も抜け、調子が良いことを示しています。自信を持ってレースプラン通りに進めることができます。

  • RHRが明らかに高い状態が続いている場合 → 疲労が抜けきっていない、または体調に不安がある可能性があります。レースプランを変更し、前半は無理せず様子を見る必要があります。

5. 【実例公開】ベストが出たレース vs 失速したレース:RHRの決定的な違い

私自身の経験からも、この指標の重要性を強く実感しています。

以下は、ベストタイムが出たレース失速したレースの、レース前約2週間における安静時心拍数の推移です。テーパリング期間中の心拍数の変化に明確な違いがありました。

R7年2月 大阪マラソン(2時間30分59秒)
2/10:47 → 2/22(2日前):43 → レース当日:48

R7年12月 福岡国際マラソン(2時間38分20秒)
11/24:47 → 12/5(2日前):50 → レース当日:51

大阪マラソンでは、テーパリングに入ってから安静時心拍数が徐々に低下しているのに対し、 福岡国際マラソンでは、レース直前まで高い状態が続いていることが分かる。

大阪マラソンでは、2週間かけてRHRが明確に低下し、疲労が抜けている状態でした。一方、福岡国際マラソン前は、調整期間にもかかわらず高い状態が続いており、体調が万全ではないサインが出ていました。

レース当日の緊張で心拍数が上がることはありますが、直前のRHRの推移には明確なコンディションの違いが表れます。

6. まとめ|RHRは「毎朝確認できるコンディション指標」

安静時心拍数(RHR)は、特別な検査なしに、毎朝簡単に確認できる貴重な指標です。ペースや走行距離と違い、身体の内側で起きている回復状態や疲労の蓄積を客観的に把握することができます。

マラソンで結果を出すためには、「頑張ること」だけでなく、「整えること」も同じくらい重要です。ぜひ、RHRを日々の練習やレース調整に取り入れてみてください。

RHR活用の3大メリット

  1. オーバートレーニングの早期発見

  2. トレーニング適応の客観的な確認

  3. テーパリングの成功度の指標

⚠️ 注意点|RHRを指標として活用する際の4つのポイント

RHRを有効活用するために、以下の点に注意しましょう。

  • ① 低ければ低いほど良いわけではない RHRには先天的な個人差が大きく、他人の数値と比較する必要はありません。「自分の普段の値と比べてどうか」という視点で判断しましょう。

  • ② 単日の数値で一喜一憂しない 睡眠時間や食事、精神的な緊張などにより、RHRは日々変動します。1日だけの上昇・低下ではなく、数日〜1週間程度の傾向を見ることが大切です。

  • ④ RHRだけで判断しない RHRは非常に有用ですが、これだけが全てではありません。主観的な疲労感や、実際に走ったときの感覚とあわせて総合的に判断することが重要です。

安静時心拍数(RHR)は、あなたの身体が発する正直なサインです。このサインを味方につけ、賢く体調管理を行うことで、あなたのマラソンライフはさらに豊かになり、目標達成に近づくでしょう。ぜひ、今日から毎朝のRHRチェックを習慣にしてみてください!

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