マラソン大会が近づくと、こんな不安に襲われませんか?
「このままの練習量で本当に大丈夫だろうか…」
「休んでいる間に走力が落ちてしまうのではないか…」
特に真面目なランナーほど、この「焦り」から直前に走行距離を増やしてしまいがちです。しかし、その結果待っているのは「本番での身体の重さ」や「後半の失速」です。
今回は、そんな失敗を防ぎ、最高の状態でスタートラインに立つための科学的調整法「テーパリング(フィットネスー疲労理論)」について解説します。 「勇気を持って休む」ことが、なぜ速さに繋がるのか。 そのメカニズムを解明します。
マラソン直前にやりがちな「3つの失敗」
多くの市民ランナーが陥る「調整ミス」には共通点があります。
不安解消の30km走: レース2週間前に長距離を走ってしまう。
毎日のジョグ: 「走らないと不安」で疲労を溜め続ける。
強すぎる刺激: 直前にインターバル等で追い込みすぎる。
なぜ、良かれと思ってやったこれらが裏目に出るのでしょうか?
その原因は、私たちが信じてきた「ある理論」の誤解にあります。
「超回復理論」の落とし穴
これまでトレーニングの常識とされてきたのが「超回復理論」です。 「練習で傷ついた筋肉を休ませることで、以前より強くなる」という考え方ですね。
イメージしやすい例: ドラゴンボールのサイヤ人が死にかけた後にパワーアップしたり、『刃牙』が砂糖水を飲んで復活するシーン。あれがまさに超回復です。
この理論自体は間違いではありません。しかし、レース前の調整(テーパリング)において、この理論だけで考えると大きなミスを犯します。
超回復だけを信じると…
「疲れを抜く=完全に休む・強度を落とす」という発想になり、ジョグだけの調整になりがちです。 するとどうなるか?
疲労は抜けるが、身体のキレ(フィットネス)も落ちる
結果: 「身体は軽いのに、心肺がきつい」「スピードが出ない」
皆さんもそんな経験はないでしょうか。
そんなときに、参考にして欲しいのが、「フィットネスー疲労理論」です。
速さを維持して疲れだけ抜く「フィットネスー疲労理論」
この理論では、自分のパフォーマンスを以下の式で定義します。
重要なのは、「体力」と「疲労」は別物であり、消えるスピードが違うという点です。
疲労(Fatigue): 数日~1週間で急激に抜ける(短期)。
体力(Fitness): 一度つけば、数週間は落ちない(長期)。
つまり、「体力(フィットネス)のタンク」は満タンのまま、「疲労のタンク」だけを空にする期間を作れば、パフォーマンスは最大化します。これがテーパリングの正体です。
【実践】量は減らして、強度は守る!
では、具体的にどう調整すればよいのでしょうか。鉄則は2つだけです。
練習量(距離・時間)は大幅に減らす
総負荷を下げるため、走行距離は普段の40~60%まで大胆にカットします。これで「疲労」を抜きます。
練習強度(ペース)は維持する
ここが最重要です。距離は減らしても、設定ペース(スピード)は落としてはいけません。
短くても良いのでレースペース付近の刺激を入れることで、「フィットネス」の低下を防ぎます。
[具体的なメニューの変換例]
| 普段の練習 | テーパリング期 | |
| 1000m × 10本 | 1000m × 4~6本 | ペースは維持し、本数だけ減らす |
| 16km テンポ走 | 7~10km テンポ走 | 距離を半分にし、質を保つ |
| 90分 ジョグ | 45~60分 ジョグ | 時間を短くし、疲れを残さない |
メンタル対策:「走らない不安」との向き合い方
テーパリングで最も難しいのは、実は脚づくりではなく「メンタル」です。 練習量を半分にすると、真面目な人ほど「サボっているのではないか」という罪悪感に襲われます。
しかし、こう考えてください。 「練習量を落とせるのは、これまで十分に積み上げてきた証拠である」と。
身体が軽く感じる
走りたくてウズウズする
この感覚が出てくれば、テーパリングは成功しています。 直前のケガで1週間休んだ人が、意外と自己ベストを出すことがありますが、あれは偶然にも「テーパリング(完全休養)」が成立していたからなのです。
まとめ:テーパリングは「サボり」ではなく「戦略」
今回の記事で解説した「フィットネスー疲労理論」に基づくと、レース直前の過ごし方は単なる休息ではありません。
テーパリング(Tapering): 練習量を減らし、疲労を抜く「手段」
ピーキング(Peaking): 身体のキレを最高潮に持っていく「目的(ゴール)」
多くのランナーが直前に「走らない不安」を感じるのは、練習量を減らすことを「サボり」や「トレーニング不足」だと感じてしまうからです。 しかし、これからはこう考えてみてください。
「練習量を落とすのは、ただ休んでいるのではなく、当日にピークを持っていくための『攻めの戦略』である」と。
この式が示す通り、「フィットネス(走力)」を維持したまま、「疲労」だけを最小限にすることができれば、必ずパフォーマンスは上がります。
「練習を落とすのが怖い」と感じるのは、あなたがこれまで真剣にトレーニングを積み重ねてきた証拠です。その不安は「準備不足」ではなく「本気度」の裏返しです。
ぜひ自信を持って、「量は減らすが、強度は保つ」という調整を実践してください。
スタートラインに立った時、驚くほど身体が軽く、練習の成果を十分に発揮できるはずです。
自己ベスト更新に向けて、頑張っていきましょう!



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