マラソンのトレーニングとして定番の「30km走」。多くのランナーが取り入れている練習ですが、そもそもなぜ“30km”なのか?本当に効果があるのか? そして、30kmでなければならないのか?
この記事では、30km走の目的や有効性、活用の仕方について考えてみたいと思います。
30km走の目的と意義
① フルマラソン後半に向けた「足づくり」
「30km走=足づくり」というのはよく聞く話です。つまり、フルマラソンの後半でバテずに走り切るための“脚の耐久力”を養うのが目的です。
ただし、42.195kmに対して30kmは約70%の距離。これだけで「足づくり」が十分かといえば、少し疑問も残ります。
マラソン練習で重要なのは、「レースペース(MP)でどれだけ長く走れるか」という点です。その観点から言えば、ペースが遅すぎるロング走は直接的に本番のパフォーマンス向上にはつながりにくい可能性もあります。
むしろ、90~95%のMPで36〜38kmを走るような実戦に近いトレーニングの方が、マラソン終盤を走り切る脚づくりには効果的です。
② 有酸素持久力の向上
もう一つの目的が有酸素持久力の向上です。一般的に、有酸素能力を高めるには90〜150分程度の運動が最も効果的とされています。
たとえば、1km4分ペースで30km走ればちょうど2時間。この場合、30km走は理想的なトレーニングになります。
しかし、1km5分以上のペースになると、30kmの走行時間は2時間半を超え、疲労やケガのリスクが高まります。回復に時間がかかり、継続的な練習を妨げる可能性もあるため、ペースと距離のバランスを見極めることが重要です
そもそも「30km」でなければいけないのか?
日本では30km走が主流ですが、海外では「20マイル(約32km)走」が一般的です。つまり、「30kmでなければいけない」わけではありません。
たとえば26kmや28kmの距離走でも目的は果たせますし、反対に32kmや34kmまで距離を延ばすケースもあります。重要なのは“距離”ではなく、“目的に応じた負荷”をかけることです。
30km走を最大限に活かすポイント
① ロング走の“強度”は時期に応じて調整する
たとえば、夏場は秋以降の本格的なロング走に備える基礎期ととらえ、80~85%MPでの2時間走を中心に、無理なく走力を高めていきましょう。
秋からレース期にかけては、徐々に距離と強度を引き上げていきます。具体的には以下のような進め方が考えられます。
90%MPで30km →90%MPで34km →90%MPで36km →95%MPで30km →95%MPで36km
ポイントは、「急に負荷を上げないこと」。走行時間が2時間半を超えない範囲で、段階的に距離やペースを上げていくのが理想です。
② 30km走は“継続の一部”でしかない
「35kmの壁を破るために30km走を」という考えもありますが、1回の距離走で劇的な効果を得るのは難しいのが現実です。
実際には、日々の走行距離の積み重ねこそが、マラソン成功の鍵です。たとえば「週1回の30km走」よりも、「毎日20km走る」方がトータルでは効果が大きいとも言えます。
無理なく継続できる距離走を日常的に組み込むことが、本番でのスタミナを育てる最も確実な方法です。
結論:30km走は目的に応じて「使い分ける」
30km走には確かに意味があります。ただし、「30km」という数字にとらわれる必要はありません。
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フルマラソン後半の脚づくり
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有酸素持久力の強化
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本番に向けたペース慣れ
こうした目的に応じて、距離・ペース・時期を柔軟に調整しながら活用することがポイントです。
最初は80%MPでのロング走から始め、土台ができたら90~95%MPでの30〜36km走へとステップアップしていきましょう。
マラソンは「一度の練習」で決まるものではなく、日々の積み重ねによって作られる“総合力”です。
おすすめ練習スケジュール例
時期 | 内容 |
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6~8月 | 80〜85%MPでの2時間走、距離より継続重視 |
9~12月 | 90~95%MPでの30〜36km走、段階的に負荷アップ |
「30km走」は、あくまで“手段の一つ”にすぎません。自分の走力・体調・目標に合わせて最適なロング走を取り入れ、レース本番での自己ベスト更新を目指しましょう。
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