インターバルの目的は何でしょうか。VO2Maxを鍛える、LTを鍛える、はたまた解糖能力を鍛える。それぞれの目的をもってインターバルをしていると思います。
そして、インターバルトレーニングをするときに、意識することは何でしょうか。おそらく、多くの人がどのくらいのペースで疾走区間を走るか。だと思います。しかし、インターバルトレーニングにおけるリカバリー区間の過ごし方は練習の肝といってもいいくらい大事なものになります。
この記事ではインターバルトレーニングのリカバリー区間の重要性についてまとめていきます。これを読んで、是非インターバルの効果アップを狙ってください。
・リカバリーを使い分けて狙った効果を得よう
リカバリーの種類
まず、インターバルトレーニングにおいて、リカバリーの方法は大きく2つあります。
① 一定時間のリカバリー (例: 10x500mで30秒のリカバリー)
② 一定距離のリカバリー (例: 15×200mで200mのジョギング)
① 一定時間のリカバリー
一定時間のリカバリーの場合、立つ、歩く、ジョギングするといったことを各自が自由に決めて行います。その場でリカバリーすることも可能なため、トラック練習ではないときでもインターバルトレーニングがやりやすくなります。また、リカバリー間隔も細かく調整することができます。例えば、上記の10 x 500mでは、30秒のリカバリーから始め、きつすぎると感じ始めたら40秒または45秒に増やすという形で、30~45秒の休憩をとることも可能となります。
② 一定距離のリカバリー
一定距離を走るリカバリーは、トラック練習でよく使われます。例えば、200mのインターバルで、リカバリーとして200mのジョギングをするのが定番。この場合もトレーニングがきつすぎるときは、200mのジョギングをゆっくり行うと、次の疾走時に良いフォームを維持することができます。
リカバリーの種類
つぎに、リカバリーの種類を見ていきましょう。
① その場でのリカバリー
インターバルでは疲れてその場で休むこともあるが、立っている状態とゆっくり歩いている状態との間の代謝コストの差はそれほど大きくなく、「筋肉のポンプ作用」によって血流を促すためには、立っている状態ではなく歩く方が良く、結果的に歩いた方がリカバリーは速くなる。
よって、その場で立ち止まるようなインターバルはあまりオススメではありません。
② ウォーキングリカバリー
ウォーキングリカバリーは、回復を早めつつ、トレーニングにおける走行距離を最小限に抑えたい場合 に最適となります。 例えば、怪我をしやすいアスリートの場合や、ダブルスレッショルドを行うときのようにすでに走行距離が多い日の場合に使います。ただし、有酸素運動による追加のメリットが得られないという部分があります。
③ ジョギングによるリカバリー
ジョギングによるリカバリーは、一般的に使われている方法になり、リカバリー中に有酸素運動を追加できる方法になる。リカバリーのスピードが速いほど回復は遅くなり、再生される総無酸素エネルギーは少なくるため、ウォーキングリカバリーと同様に必要なトレーニング効果を得るためにはこれらをうまく利用する必要があります。
また、ハイスピードでのスプリントや5000mのペースより速いペースでのロングインターバルの場合は、無酸素エネルギーを大量に再生する必要があるため、ジョグによるリカバリーは使用しない方が良いかもしれません。
④ 速いペースでのリカバリー
速いペースでのリカバリーは、乳酸をエネルギーに酸化するために非常に適した筋肉の代謝状況を作り出すことができます。たとえば LT2 ペースで1km走る、またはマラソンペースで2~3km走ると、血液と筋肉内の周囲乳酸レベルが上昇します。そして、リカバリー中の強度が引き続き高い場合、体はこの乳酸を循環させエネルギーを得るために酸化するように働きます。
このように、それぞれのリカバリーには異なる目的があります。では、それらをどのように使い分けていけば良いのでしょうか。
リカバリーを使い分ける
インターバルトレーニングは大きく次の2つに分けられます。
① LT2、CVを超える強度(VO2Max,Iペース)でのインターバルトレーニング
② LT2に近いか、わずかに低い強度でのインターバルトレーニング
それぞれのトレーニングでリカバリーの目的は異なってきます。
① LT2、CVを超える強度(VO2Max,Iペース)でのインターバルトレーニング
LT2やCVを超えるようなスピードで走っているとき、VO2はVO2maxに向かって上昇し、心拍数はHRmaxに向かって上昇し、血中乳酸値は着実に増加していきます。このようなトレーニングでのリカバリーの役割は、これらの値を下げて、疲労の限界に達することなく、さらに繰り返し本数を重ねることができるようにすることになります。
疾走スピードが上がるほど消費する無酸素エネルギーも増えます。この無酸素エネルギーを適度な量だけ再生する必要がある場合は、疾走区間の長さに比べて短いリカバリーで済みます(10kmペースで運動している場合など)。しかし、無酸素エネルギーを大量に消耗するような運動負荷では、非常に長いリカバリーが必要になります。(例えば、800mの目標レースペースでの3 x 500mのような練習では、8~10分の回復が必要になる可能性がある。)
② LT2に近いか、わずかに低い強度でのインターバルトレーニング
ハーフマラソン、特にマラソンランナー向けとしては、回復が早いインターバルトレーニングを使用して、乳酸が有酸素エネルギーの燃料として利用できる生理学的状態に身体を置くことがとても効果的になります。そのためには速筋線維における乳酸産生レベルの上昇、遅筋における炭水化物の酸化率の上昇が必要となります。
このようなインターバルでは、高速だが完全な有酸素運動ペース(たとえば、マラソンやハーフマラソンのペース)で疾走区間を走り、速いペースでのリカバリー(疾走区間より10~15%遅い程度)を交互に行うことが効果的です。
リカバリーにゆっくりとしたジョギングやウォーキングをすると、筋肉のエネルギー源として脂肪が利用されるようになります。乳酸をエネルギーに再利用する能力の発達を促すには、リカバリー区間の中で、疾走中に生じた大量の乳酸を酸化させながら、身体の回復がある程度起こるようなペースでのリカバリーを取り入れる必要があります。
トップクラスのマラソン選手やハーフマラソン選手は、105% MPで10 x 1km/ 90%MPで1kmなどの「変化走」を行っています。トレーニングを積んだ選手であれば、このトレーニングは30秒のジョギングでも十分回復しますが、1kmをある程度のペースで走ることで、乳酸を酸化しエネルギーとして再利用する状態で長い時間を過ごすことができ、これらの能力に対するより大きなトレーニング刺激を得ることができます。
このように、それぞれのインターバルによってリカバリーの方法を変えることで、正しい効果を得ることができます。
インターバルトレーニング例
ここでは、具体的なインターバルトレーニング例を紹介します。
1. 10kmのペースで12 x 500m、25秒のウォーキングリカバリー
これはインゲブリクセンが実施しているような二重閾値走における午後のトレーニングなどに当たります。血中乳酸値と心拍数を安定させるために、回復時間をできるだけ短くしますが、その短い時間でできるだけ多くの回復をすることも必要になります。また、朝昼の二部練習のため、その日の走行距離がかなり長くなることを考えると、余分なランニング量を積み上げるのは避けるために、回復時間は歩くことになります。
2. 800mのペースの105%で6 x 300m、4分間のウォーキングリカバリー
これは 800m ランナー向けの「特異的スピード」トレーニングとなります。速いペースでの繰り返しにより、無酸素エネルギーの蓄えが急速に減少します。最初の1セットを終える頃には、無酸素エネルギーの大部分が失われている可能性があります。大きな無酸素パワーが必要なため、ここでリカバリーをジョギングにしても、本数を重ねると必要なペースを達成できない可能性があります。
3. 10kmのeasy run + 3セット: 5kmの88-90%ペースで2km、400mをeasyからmoderateペースでリカバリー
このような練習の場合、後半を一気に(5km の 90% のペースで6km)走るのはキツイですが、2kmに分けることで走ることが可能になります。さらにeasyからmoderateペースでリカバリーを入れることで、2kmの疾走区間が速くなりすぎるのを防ぐことができます。結果的に、17kmほど走ることになり、全体としてLT1~LT2ほどの強度でトレーニングした状態にすることができます。
4. 8セット:マラソンの105%ペースで1km、マラソンの90%ペースで1km
これは上記でも示したように変化走的なトレーニングになります。レナト・カノーヴァのトレーニングでも多く見られるこのトレーニングは、乳酸の酸化に非常に有効となります。さらに、このトレーニングは次のように発展させることが可能です。
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ボリュームアップ(10 x 1k / 1k)
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距離を伸ばす (5 x 2k / 1k)
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より速いリカバリー (105% MP で 8 x 1k / 95% MP で 1k)
この中でも3つ目のトレーニングは、かなり高度なトレーニングになります。しかし、マラソンペースに非常に近いペースで走りながら回復する能力は、マラソンにとても必要な能力となり、この種のインターバル (8~10 x 1km / 1km) をリカバリーを 96~97% MPの速さで実施できれば、マラソンに向けた体力が非常に優れていることになります。
逆に、このトレーニングを試してみて、リカバリーに90% MPでもきつすぎると感じた場合は、85%または80%に下げて実施し、その後少しずつリカバリー速度を上げていくようにしましょう。
まとめ
ここまでのことをまとめると
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LT2よりも速いペースで疾走区間を走るリカバリーでは、消費した無酸素エネルギーの一部を再生することが目標となるため、ゆっくりと歩くようなリカバリーを取り入れる。
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LT2またはそれ以下のペースで疾走区間を走るリカバリーでは、疾走区間で速くなり過ぎるのを防ぐために短いジョギングでリカバリーをする。もしくは身体が乳酸を酸化することを促すために、ある程度のペース(疾走区間の85~90%)でリカバリーをする。
このように、インターバルの目的に応じてリカバリーを使い分けることで、より効果的なトレーニングにすることができます。よく、1000mをダニエルズの「Iペース」で走り、リカバリーを200mにしてインターバルを実施することがありますが、この200mのジョグで次の1本を走り切れる状態に戻すことができなければ、結果的に得られるメリットは少なくなります。それだと、ただしんどいだけの練習になってしまいます。
これからはリカバリーまで含めてインターバルトレーニングを計画してみてください。
【参考】
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